「LED Vision LabによるIP65防水性能テストの実測レポート。雨量100mm/hの豪雨環境を再現し、筐体構造・通気口・コネクタ部への浸水挙動を評価。防水パッキンやGOBコーティングの効果、メンテナンス上の注意点も含め、実運用での“IP65の限界”を科学的に分析しました。」

目次
検証の目的
LEDビジョンの屋外設置では「IP65」防水等級が一般的な基準とされています。
しかし、実際の豪雨時にはこの数値がどこまで信頼できるのか?
LED Vision Labでは**雨量100mm/h(時間雨量としては非常に激しい大雨)**の環境を人工的に再現し、
IP65モデルがどのような挙動を示すのかを実測検証しました。
🌧️ テスト環境と条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験場所 | Crystal Vision 北海道テストラボ(屋外防水試験ブース) |
| 機種 | CV-Bシリーズ(屋外用)/CV-Vシリーズ(薄型屋内準拠モデル) |
| 防水等級 | IP65(防塵等級6/防水等級5) |
| 雨量 | 100mm/h(連続60分) |
| 水圧 | 約0.02〜0.03MPa(上方・側方から散水) |
| 温度条件 | 15〜20℃ |
| 散水角度 | 0°/45°/90°(3方向) |
| 通電状態 | 通電ONで映像表示中 |
| 測定項目 | 表面温度・筐体内部湿度・導電部抵抗変化・漏電検知 |
🧪 テスト手順
- 乾燥状態での基準データ取得
- 表面温度/内部湿度をゼロベースで記録。
- 散水ノズルを上方45°に設置し、1時間連続噴射
- 雨粒径2.5mm相当のノズルで豪雨を再現。
- 3方向(正面・上部・側面)から交互に散水
- 筐体間のジョイント部、ベント孔、背面端子部を重点的に確認。
- テスト後、筐体を分解し浸水痕・湿気跡を検証
- 通電状態でのLEDドット欠損・異常電流値を測定
📊 結果概要
| テスト条件 | 現象 | 評価 |
|---|---|---|
| 正面45°散水(60分) | 表面温度上昇+軽度の水膜形成 | 異常なし |
| 上方直噴(60分) | 天板ジョイント部から微量湿気侵入 | 軽度注意 |
| 側面90°散水(60分) | ケーブルグランド部に水滴滞留 | 要改善(設計) |
| 背面ベント孔付近 | 内部湿度+2.4%上昇(限界ライン) | 許容範囲内 |
| 電気的異常 | 漏電・ショート・表示乱れなし | 合格(IP65維持) |
結論:
連続1時間・雨量100mm/hでも、筐体内部への明確な浸水は確認されず。
ただし、上面ジョイントおよびケーブル出口付近には**設計上の“水滞留リスク”**が存在。
運用環境によっては、連続降雨3時間以上での劣化リスクが上昇することが判明しました。
🧩 詳細考察
1. ジョイント部の限界
ゴムパッキン+ネジ固定構造では、長時間の水圧が加わると微細な毛細管現象が起こる。
→ 特に上部水平面では、水圧0.03MPaを超えるとパッキン裏に浸透傾向が見られた。
2. ケーブルグランドの弱点
樹脂製のケーブルグランドは経年硬化で密着性が低下。
水滴が滞留し、グランド内に水膜を形成するケースあり。
→ シリコン系シーリング処理を推奨。
3. GOB/COB構造の防水性
GOB(Glue On Board)モジュールでは表面コーティングが防滴膜として機能。
結果として、非GOBモデルよりも内部湿度上昇が30%低減。
COBモデルでも良好だが、端部封止が不完全だと逆に水分滞留が発生。
⚙️ 改善提案
- 上部パネルの勾配設計を1〜2°付けることで水流を逃がす。
- ケーブルグランドの二重シール構造化。
- 内部ベントフィルターを防水透湿膜タイプに変更(例:Gore-Texフィルム)。
- GOB/シーリング強化モデルを屋外常設用として標準化。
- 設置角度を5°以上後傾にすることで雨水の滞留を防止。
🔍 実運用上の注意点
- 屋外ビジョンは防水試験クリア後も経年劣化でIP性能が低下します。
- 定期的な「高圧洗浄」や「コネクタ増し締め」は、逆にパッキンを痛めるリスクあり。
- 推奨:年1回の目視点検+5年ごとのパッキン交換。
- 雪国では融雪時の凍結・解凍サイクルが防水性能に影響するため、排水設計を必ず考慮。
🧠 まとめ
| 評価項目 | 結論 |
|---|---|
| 豪雨耐性 | IP65レベルで十分耐性あり(1時間) |
| 弱点部位 | ケーブルグランド・上部水平ジョイント |
| 追加対策 | 勾配設計・透湿ベントフィルム |
| 実運用寿命 | 5〜7年でパッキン交換推奨 |
| 総評 | IP65は“防滴限界”ではなく“実用防水”レベル。連続豪雨3時間超は要注意。 |
🧩 今後の研究予定(LED Vision Lab 次段階)
- IP66/IP67モデルの比較試験(防水ジェット・水没耐性)
- COB封止技術による完全防水モジュールの開発
- AI温湿度センサーによるリアルタイム防水劣化検知
- 防水+防塵+排熱設計の最適バランス研究
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