
① アルミ板の厚みはどれくらい必要?
② 背面構造(フレーム)はどの程度の剛性がいる?
③ 電源の配置ってどこまで影響するの?
どれも「細かい部分」のように見えて、実はLEDビジョンの寿命・映像の安定性・発熱管理・安全性に直結する最重要要素だ。
この記事では、施工現場と検証経験が多いプロ視点で、この3つがどのように品質を左右するのか、できるだけ専門用語を噛み砕いて解説する。
1. アルミ板厚がLEDビジョンの「歪み」と「輝度ムラ」を左右する理由
まずはアルミ板の厚み。実際の現場では1.5mm〜3.0mmをよく見るが、どれでもいいわけではない。
■ 板厚が薄いと起こる典型トラブル
- 熱膨張による微妙な反り
LEDは発熱するため、長時間点灯するとモジュール裏のアルミが膨張し、板が弓なりに反る。
反るとどうなるか?
・パネル同士の段差
・モジュールの浮き
・隙間からの光漏れ
これらが起こり、結果として「明るさムラ」や「線が走ったような影」が見える。 - 振動によるビビり音や映像ノイズ
屋外設置では風で微振動が発生する。板厚が1.5mmクラスだと、揺れが電源・基板に伝わってノイズや接触不良を起こす。 - 長期運用時の“歪み累積”
薄い板ほど、熱と荷重による歪みが蓄積しやすい。
特に大型ビジョンでは「年単位」で差が出る。
■ 最適な厚みは?
・室内小型ビジョン:2.0mm前後
・屋外中大型ビジョン:2.5〜3.0mmが推奨
屋外は気温変動が大きいので、板厚が足りないと歪みが一気に出る。
逆に、厚ければ良いというものでもない。重量とコストが増え、壁面負荷も上がる。
■ 板厚は“熱処理の一部”として考える
LEDビジョンは映像機器でありながら「熱処理装置」でもある。
アルミはそのまま巨大なヒートシンクになるため、板厚=熱容量=映像安定性につながる。
つまり、板厚は「強度」と「冷却」を同時に担う最重要パーツということだ。
2. 背面構造(フレーム)はパネル精度と寿命に影響する“骨格”設計
アルミ箱体の背面フレームは、建物でいえば「柱と梁」。
ここが弱いとどれだけ高品質なLEDモジュールでも性能を発揮できない。
■ 背面構造が弱いとどうなる?
・パネルが微妙にねじれる
・水平が取れず画面に段差
・長期間でフレームが沈む
・電源が振動して騒音発生
・熱が逃げず内部温度が上がる
簡単に言えば「安定して真っ直ぐ固定できない+熱を逃せない」状態が生まれる。
■ 背面フレーム構造の種類
① 一枚板+補強バー構造(一般的)
コストを抑えつつ強度を確保しやすい。
ただし補強バーが少ないと反りやすい。
② 格子フレーム構造(中〜大型に最適)
・剛性が高い
・熱が逃げやすい
・振動に強い
大型ビジョンは基本的にこれ。
③ モジュール一体型フレーム
小型屋内用に多い。
薄型化できるが、熱容量が小さいため電源配置との調整が重要。
■ 背面構造の“理想”
- モジュールの接合面に均等な圧力がかかる
- 電源や受信カードを振動から隔離する
- 熱を上下方向に逃がす導線がある
- 四隅だけでなく中央にも支持点がある
特に④が重要で、中央がたわむと“中央だけ少し暗い”という症状が出る。
現場では案外これが多い。
3. 電源配置は映像の安定性と寿命を決定する“心臓部”設計
LEDビジョンの電源は、ただ置けばいいわけではない。
配置・配線距離・負荷バランスなどが実は映像の品質に直結している。
■ 間違った電源配置でよく起こる症状
・画面の一部が暗い
・白表示時に電源落ち(ブレーカー落ち)
・電圧降下で赤色が弱くなる
・ジラジラとしたノイズ
・高温で電源寿命が短くなる
こうしたトラブルは「電源の質」というより配置の問題であるケースが多い。
■ 電源配置の3つのポイント
① 電源は中央に寄せすぎない
中央に集めると熱が一点に集中し、夏場の屋外は危険。
最低でも左右に分散させて「熱の逃げ道」を作る。
② モジュールとの距離はできるだけ一定に
距離がバラバラだと電圧降下が起きて“色ムラ”の原因になる。
③ 電流配分は均等に
例:
・一つの電源だけ負荷MAX
・隣の電源はほぼ無負荷
という状態が最悪。
故障率が跳ね上がる。
■ 屋外ビジョンの電源は「密閉空間×高温」になる
夏の密閉筐体は60~70℃になることがある。
この温度は電源メーカーが一番嫌う領域で、寿命は半減、ひどい場合は落ちる。
だからこそ背面構造と電源配置はセットで考えなければならない。
4. 3つの要素は“独立ではなく連動”している
アルミ板厚・背面構造・電源配置。
この3つは単体で語られることが多いが、実際は強く連動している。
■ アルミ板厚が薄い → 熱がこもる → 電源が高温で落ちる
■ 背面構造が弱い → 歪み → パネル間に隙間 → 光漏れ → 輝度ムラ
■ 電源集中配置 → 発熱 → アルミ板が反る → 映像ムラ
このように因果関係でつながっているため、どれか一つだけ“妥協”すると必ず他に症状が現れる。
5. 結論:LEDビジョンは“見えない部分”が品質を決めている
LEDビジョンや電子看板を検討するとき、多くの人が注目するのは
「P値」「HDR」「輝度」「コントローラ」など目に見えるスペックだ。
しかし本当の品質は裏側で決まる。
・板厚は十分か?
・熱容量をどう確保しているか?
・フレームは格子か?補強バーは何本か?
・電源は均等配置か?
・配線距離は一定か?
・排熱経路は設計されているか?
これらを総合的に見ることで、初めて“落ちない・歪まない・ムラが出ないビジョン”が作れる。
特に長期運用では設計品質が寿命に直結する。
1年目は問題なくても3年目に差が出るのは、ほとんどが背面構造や熱設計の違いだ。
LEDビジョン/ビジョン/デジタルサイネージ/電子看板は「映像機材」であると同時に「金属・熱・電気の複合装置」だという認識が大切だ。

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