デジタルサイネージの誕生秘話と日本市場の現在地

――看板は、なぜ“動き出した”のか

目次

はじめに|街の風景が変わった瞬間

駅を歩けば、発車案内や広告が滑らかに切り替わり、
繁華街では巨大なLEDビジョンが昼夜を問わず情報を放ち続けている。
私たちは今、「光る・動く看板」 がある風景を当たり前のものとして受け入れている。

しかし、ほんの数十年前まで、街の情報伝達の主役は
ポスター、看板、ネオンサインといった 静止した媒体 だった。

なぜ看板は動き始めたのか。
そして、なぜ日本はデジタルサイネージ大国になったのか。

その誕生の裏側と、日本市場の現在地をひも解いていく。


第1章|「看板」というメディアの原点

人類が「看板」を使い始めた歴史は非常に古い。
古代ローマでは、商店の前に象徴的な絵や文字を掲げ、
「ここで何が売られているか」を視覚的に伝えていた。

中世ヨーロッパ、日本の商家、江戸の暖簾や看板も同じ役割を果たしていた。
看板とは本来、最も原始的で、最も強力なメディア だったのだ。

だが、その本質は長い間変わらなかった。
「掲示する情報は固定され、更新には人の手が必要」
――それが当たり前だった。


第2章|電子化の芽生え|1970年代アメリカ

テレビが“看板代わり”になった日

デジタルサイネージの原型は、1970年代のアメリカにある。
当時、家電量販店やショッピングモールの店頭で
ブラウン管テレビを置き、CM映像を流す という試みが始まった。

それはまだ「デジタルサイネージ」という言葉も存在しない時代。
しかし、

  • 動く映像
  • 光による視認性
  • 音声との組み合わせ

これらは、紙の看板とはまったく違う訴求力を持っていた。

第3章|「デジタルサイネージ」という言葉の誕生

1990年代初頭、イギリスのショッピングセンターで
複数のディスプレイを組み合わせた ビデオウォール が設置された。

その管理・運用を説明する中で使われ始めた言葉が
「Digital Signage」 だったとされている。

  • Sign(標識・看板)
  • Digital(電子的な)

この2つが結びついた瞬間、
看板は「印刷物」から「システム」へと進化した。


第4章|技術進化がすべてを変えた

ディスプレイ技術の進化

  • CRT(ブラウン管)
  • プラズマ
  • LCD
  • LED
  • OLED

特に LEDディスプレイ の登場は決定的だった。
高輝度・大型化・屋外耐久性――
これにより、屋外広告の主役が入れ替わった

ネットワークとCMSの登場

2000年代に入り、インターネットとクラウド技術が普及すると
デジタルサイネージは 単なる映像表示装置ではなくなる

  • 遠隔更新
  • 時間帯別配信
  • 複数拠点一括管理

「表示」から「運用」へ
これがサイネージを本格的な広告メディアへ押し上げた。


第5章|日本での普及|転機は「駅」と「繁華街」

日本でのデジタルサイネージ普及を語るうえで外せないのが
鉄道インフラ だ。

  • 発車案内
  • 路線情報
  • 広告

全国に張り巡らされた鉄道網は、
デジタルサイネージにとって理想的な設置環境だった。

さらに新宿・渋谷・大阪・札幌などの繁華街では
大型ビジョン=街の象徴 という文化が形成されていく。

第6章|日本市場の規模と占有率

市場規模の推移(概算)

  • 2010年代後半:約2,500〜3,000億円規模
  • 2024年:約2,700〜3,000億円
  • 今後も年平均8〜9%成長予測

特に以下の分野が市場を支えている。

分野特徴
交通駅・空港・車内
商業施設モール・店舗
屋外広告大型LEDビジョン
業務用途企業・工場・医療

OOH広告における占有率

紙看板・ポスター中心だったOOH広告は、
今や デジタル比率が急上昇

都市部では
「見える広告の多くがデジタル」
という状態がすでに現実になっている。


第7章|なぜ日本でここまで普及したのか

理由は一つではない。

  1. 高密度な都市構造
  2. 公共交通依存度の高さ
  3. 映像表現への文化的親和性
  4. LED・電子部品産業の強さ

特に「映像で情報を受け取ること」への抵抗のなさは
日本独自の強みと言える。


第8章|AI時代のデジタルサイネージ

現在、デジタルサイネージは次の段階へ進んでいる。

  • AIによる視認分析
  • 属性推定
  • 時間帯・人流連動配信

「誰に、いつ、何を見せるか」
これをリアルタイムで最適化するメディアへ。

終章|看板は、都市のインフラになる

デジタルサイネージは
もはや単なる広告媒体ではない。

  • 災害情報
  • 観光案内
  • 多言語対応
  • スマートシティ連携

都市と人をつなぐ“情報インフラ”
それが、現在そして未来のデジタルサイネージの姿だ。

看板は動き出した。
そして今も、進化し続けている。

この記事が、LEDビジョン導入の参考になれば幸いです。
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